生活習慣病と大動脈瘤 - 肥満(症状・診断・治療)

概要

統計・疫学
男性では、どの年代においても肥満者の割合は年々増えており、特に40代~60代の肥満者は30%を超えています(平成19年国民健康・栄養調査より)。

 医学的には、肥満は体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出されるBody Mass Index(BMI)という数値で判定されます。BMI 25以上を肥満とする日本は、欧米に比べて肥満の判定基準が厳しいと言われていますが、日本人はBMIが比較的小さくても糖尿病になりやすいことが示されていますので注意が必要です。

 日本人の死因第2位の心臓病、第3位の脳卒中はいずれも動脈硬化や高血圧、脂質異常症などが重要な危険因子ですが、これらに肥満は大きく関わっています。
症状・進行
肥満が軽度な場合は症状がないことも多く、中等度以上では体重が骨や関節に負担をかけることにより「腰痛」や「関節痛」などの筋骨格系の症状が、また喉が脂肪で狭くなることにより「睡眠時無呼吸症候群」「いびき」「息切れ」などの呼吸器系の症状が問題になります。

 女性の場合は、不妊症、無月経を引き起こしやすくなり、妊娠時には浮腫や高血圧による妊娠中毒の危険もあります。

 脂肪の体内分布では、内臓にたまる脂肪が最も問題とされています。この内臓脂肪は代謝活性が高いため、脂肪が蓄積されやすい、また分離して遊離脂肪酸になりやすいという性質があり、内臓脂肪が増加すると代謝異常が起こりやすくなって他の循環器系などの疾患へ進行しやすくなります。
病型
原因が明らかではない「単純性肥満」、基礎疾患などの症状として現れる「二次性肥満」などに分類されます。また、外見上から「上半身型(リンゴ型)」「下半身型(洋ナシ型)」に、さらに脂肪組織の蓄積する部位による分類から腹部CT所見により「内臓脂肪型肥満」や「皮下脂肪型肥満」に大別されます。
診断
肥満度をみる世界共通の指標としては体格指数(Body Mass Index;BMI)が用いられています。肥満の判定基準は国によって異なり、日本ではBMI 25以上を「肥満」としています。体脂肪率による診断では男性15~19%、女性20~25%を上回る場合としています。「内臓脂肪型肥満」は腹部CTにて内臓脂肪面積を測定し診断されます。
治療
BMIにより「肥満」と判定されてもすぐに治療開始ではなく、健康障害(合併症)を伴う場合や検査によって「内臓脂肪型肥満」と診断された場合は治療を要します。

 標準治療は食事療法(脂肪を制限し十分なタンパク質を取り1日の摂取カロリーを制限)、運動療法です。また行動療法によって、心理的な部分も含めて習慣や認識を修正することが必要です。

 食事・運動による肥満の解消が困難な場合や肥満により健康を害する場合には薬物療法が行われます。「睡眠時無呼吸症候群」など緊急に減量が必要な場合には入院指導などの治療が行われます。
合併症
「糖尿病」、「高脂血症」、「高血圧」などが多く見られます。「睡眠時無呼吸症候群」を引き起こすこともあります。

肥満の各病型に対する主な原因と治療

成因についての分類

単純性肥満
 原因が明らかではないもの、過食や運動不足によるもので、特別な原因疾患はなく、肥満の約9割を占めると言われています。
二次性肥満(症候性肥満)
 何らかの基礎疾患(内分泌性、遺伝性など)による症状や、薬物の副作用として現れるものです。

脂肪組織の蓄積する部位による分類

皮下脂肪型肥満:(下半身型)(洋ナシ型)
 臀部や大腿部への脂肪沈着が著名な場合で、合併症は少ないと言われています。女性に多い型です。
内臓脂肪型肥満(上半身型)(リンゴ型)
 腹部周囲への脂肪沈着が著名な場合で、合併症が多いと言われています。男性に比較的多く見られ、様々な合併症を引き起こすと言われています。治療の原則は減量です。食事療法、運動療法、行動療法を基本として、薬物療法を行う場合もあります。