生活習慣病と大動脈瘤 - 脳卒中(症状・診断・治療)

概要

統計・疫学
 わが国では「がん」、「心臓病」とともに死亡率の高い疾患の1つであり、以前は日本人死亡原因1位でしたが、現在は3位(1位がん、2位心臓病)となっています。

 死亡数は減っていますが、患者数は増えており、入退院を繰り返し、重い後遺症が残るなど問題化しています。脳卒中の約70%が「脳梗塞」、次いで約20%が「脳出血」、約10%が「くも膜下出血」などとなっています。
症状・進行
 主な症状は、半身の麻痺する片麻痺、意識障害、言語障害、運動障害、頭痛、吐き気、嘔吐などです。「脳梗塞」と「脳出血」は脳の一部が働きを突然失うため症状は似ていて片麻痺が多く、言語障害、失調(麻痺はないがふらつく)、意識障害などの症状が出現します。

 一方、「くも膜下出血」は症状が異なり、激しい頭痛が特徴的で、発症時が痛みのピークとなり、同時に嘔吐、重症時には意識障害に陥ることもあります。
病型
 原因別に、「脳の血管がつまるもの」「脳の血管が破れるもの」「脳の血流が一時的に悪くなり神経症状が出現するがすぐに回復するもの」に大別されます。
  • 脳の血管がつまるもの(脳血栓症、脳塞栓症、心原性脳塞栓症など)
  • 脳の血管が破れるもの(脳出血、くも膜下出血など)
  • 脳の血流が一時的に悪くなるもの(一過性脳虚血発作)
診断
 CT、MRI、MRAなどの検査により病型や異常箇所の特定、症状の診察を行います。
治療
 病期により、急性期、慢性期(回復期・維持期)に大別されます。
発症後数分で脳細胞が壊死を始め、壊死した部分の回復は難しいため、早急な治療が必要です。対処が遅れるほど、予後不良となり、重い後遺症が出たり寝たきりになる可能性もあります。再発作での死亡例もあり、合併症に注意が必要です。
合併症(併存疾患)
 発症後、急性期にはさまざまな合併症が起こる危険性があります。発作による嘔吐や嚥下障害で生じる誤嚥性肺炎などの上気道感染症、中枢神経に対するストレスで起こる胃潰瘍や消化管出血(大量出血により死に至るケースもあります)、尿路感染症、脳出血(出血性梗塞)、脳血管攣縮、水頭症などです。

 「脳卒中」は生活習慣病(高血圧・脂質異常症、糖尿病など)に起因する疾患であり、特に「くも膜下出血」のほとんどの原因となっている脳動脈瘤はその破裂により命を落とす危険もありますので注意が必要です。

脳卒中の各病型に対する主な原因と治療

脳梗塞(脳血栓症、脳塞栓症)
 脳血栓症(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞)は、脳の血管が動脈硬化などで狭くなり、そこに形成された血液の固まり(血栓)が血管を閉塞させてしまうことが原因です。脳塞栓症は、心臓内や頸動脈にできた血栓が脳血管を閉塞させてしまうことが原因です。

 急性期には血管の再開通、血流を回復するための治療(血栓溶解療法など)や血液を固まりにくくする抗血栓療法、脳浮腫を軽減させる治療、脳を保護する治療などが行われます。再発予防のための治療としては薬物療法(抗血小板薬、抗凝固薬など)、外科的治療、血管内治療などがあります。全身性合併症(肺炎、胃腸管出血、尿路感染症など)に対する治療が行われます。
脳出血
 脳の細い血管が破れて脳の組織の中に直接出血することが主な原因です。

 外科的治療としては血腫除去、くも膜下出血の場合は開頭手術による破裂した脳動脈瘤の出血の停止、カテーテルによる血管内治療があります。

 内科的治療では再出血予防、脳浮腫に対する治療、全身性合併症(肺炎、胃腸管出血、尿路感染症など)に対する治療が行われます。
くも膜下出血
 脳の太い血管の一部がふくらんだコブ(動脈瘤)が破裂して脳の表面に出血が広がり、くも膜と軟膜の間にあふれた血液が脳全体を圧迫することが主な原因です。再出血予防、脳血管攣縮の治療、脳浮腫の治療、水頭症治療、全身性合併症の治療が行われます。