生活習慣病と大動脈瘤 - 心臓病(症状・診断・治療)

概要

統計・疫学
 年間約18万人の死亡者がいて(平成19年人口動態統計より)、そのうちの約半分が虚血性心疾患となっています。虚血性心疾患の総患者数は食生活の変化などにより増加しており、全国で約85万人と言われています(平成17年患者調査より)。
症状・進行
 初期症状は主に、動悸、息切れ、めまい、呼吸困難、むくみ(特に足の浮腫)、胸痛、不整脈ですが、これらの症状は心臓以外の内臓疾患や精神的ストレスなどによっても生じるので、診断には専門的な検査が必要です。特に季節の変化で悪化することが多い疾患として知られています。
病型
 主に生活習慣による動脈硬化が原因の虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脈の乱れを起こす疾患(不整脈、心房細動、心室細動、など)、先天性の心臓病(心房中隔欠損、肺動脈狭窄など)、心筋・心臓弁膜・心膜の病気、その他(心肥大、精神的な原因による心臓神経症など)などに大別されます。
診断
 心電図、運動負荷試験、胸部X線、心臓カテーテルなどの検査により診断されます。
治療
 降圧薬や抗血栓薬などによる薬物療法、カテーテルによる治療、外科的治療(重症な虚血性心疾患に対する心臓バイパス手術や心臓弁膜症への弁置換術、心臓移植など)が主な治療法です。
合併症
 心臓に疾患があることで、心臓から血液を受け取るさまざまな臓器が影響を受けます。合併症として多いのは、「腎不全」、「肝機能障害」、「血栓症」などです。

心臓病の各病型に対する主な原因と治療

主に生活習慣による動脈硬化が原因の虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞)
 冠動脈が動脈硬化などにより狭窄を起こし心筋の必要血液量を供給できなくなることに起因します。治療は、発作を抑え、狭くなったりつまっている冠動脈を回復させて血流を正常化することが第一の目的です。

 内科的・外科的な治療がありますが、軽症時や高齢患者の場合は内科的治療が中心になります。外科的治療には冠動脈バイパス手術などがあります。
脈の乱れを起こす疾患(不整脈,心房細動,心室細動,房室ブロックなど)
 心臓の収縮と拡張を繰り返す拍動のリズムが乱れる状態です。不整脈の種類によって、薬物治療、ペースメーカー留置、カテーテルを使用したアブレーション治療などがあります。ストレスなどの環境によっても悪化しますので生活面でのケアも重要です。
先天性の心臓病(心房中隔欠損,肺動脈狭窄など)
 生まれながらに持っている心臓や血管の構造異常による疾患です。最も多いのは「心房中隔欠損」で全体の60%を占めます。

 治療は内科的治療(薬物療法やカテーテル治療)と外科的治療(欠損部分を正常化する根治手術や心臓移植など)の組み合わせで行われます。
弁膜症
 心臓が全身に血液を送り出すポンプ機能を発揮するために重要な弁膜の開閉が障害される状態です。弁膜の閉まりが不十分となる弁閉鎖不全症と、開放が制限される弁狭窄症があります。高齢者の動脈硬化による大動脈弁狭窄症が増加しています。

 内科的な薬物治療には限界があり、心不全が進行する前に障害された弁膜を外科的に形成したり、切除して人工弁(生体弁と機会弁があります)に取り換える(置換)治療を行います。
その他(心肥大など)
 心肥大は心臓を構成している心室の筋肉が様々な原因によって厚くなり肥大した状態で、高血圧などが原因で起こります。食事療法(塩分制限)・薬物療法(降圧薬など)などが行われます。心臓弁膜症から併発した心肥大の場合などには外科的治療が行われます。