生活習慣病と大動脈瘤 - 脂質異常症(症状・診断・治療)

概要

統計・疫学
 厚生労働省発表の「平成18年国民健康・栄養調査結果の概要」によりますと、「脂質異常症」が疑われる人は約1,410万人(20歳以上の日本人で13.6%に相当)と推定されています。

 診断基準の1つであるトリグリセリドについては、基準値を上回る人の数が男性50代ではおよそ2人に1人、女性60代ではおよそ3人に1人となっています。
症状・進行
 「家族性高コレステロール血症」では皮膚にコレステロールの沈着(黄色腫)が見られることもありますが、それ以外では、はっきりとした自覚症状はほとんどありません。ただし、「高トリグリセリド血症」は「急性膵炎」を引き起こすことがあり、それをきっかけに判明することもあります。
病型
 その原因によって「一次性(原発性)脂質異常症」「二次性(持続性)脂質異常症」に分けられます。また、異常値を示す脂質の種類によって「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセリド血症」にも分別されます。
診断
 診断・管理には、LDL(悪玉)コレステロール・HDL(善玉)コレステロール・トリグリセリド(中性脂肪)の値を用います。異常とされる診断基準値は、空腹時の血液検査によって、LDL(悪玉)コレステロール140mg/dL以上、HDL(善玉)コレステロール40mg/dL未満、トリグリセリド(中性脂肪)150mg/dL以上となっています。
治療
 主な治療法は、生活習慣の改善を中心とした食事療法や運動療法で、食事量の調節や禁煙、適正体重の維持、運動の増加などです。それでも目標値に達しない場合は薬物療法を考慮し、スタチンやフィブラート系などの脂質異常症治療薬を投与します。
合併症
 「高血圧」、「糖尿病」を合併するケースが多くなります。他にも「腎不全」、「高尿酸血症」、「コレステロール性胆石」、「大動脈瘤」を併発するリスクが高くなります。

脂質異常症の各病型に対する主な原因と治療

原因別

一次性(原発性)脂質異常症
 コレステロールなどの脂質代謝の異常から発生することが多いと考えられています。治療は原則として食事療法ですが、運動療法や薬物療法を併用します。遺伝が強く関係している「家族性高コレステロール血症」は食事療法・薬物療法に加えて血漿交換療法も行います。
二次性(持続性)脂質異常症
 他の疾患(肥満症、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、閉塞性黄疸、女性ホルモン減少など)から引き起こされると考えられています。原病の治療が優先になります。

異常値を示す脂質の種類別

高LDLコレステロール血症
 コレステロールの担体である低比重リポ蛋白(LDL)が血液中に多く存在する状態で、動脈硬化に関係が深いLDLコレステロール値が高くなっています。治療の基本は、生活習慣の改善を中心とした食事療法や運動療法、薬物療法です。
低HDLコレステロール血症
 動脈硬化を抑制する方向に働く血液中の高比重リポ蛋白(HDL)が少ない状態で、特に女性において心血管疾患の重要なリスクファクターとなることが知られています。治療の基本は、生活習慣の改善を中心とした食事療法や運動療法、薬物療法です。
高トリグリセリド血症
 血液中のトリグリセリドが多く存在する状態で「内臓脂肪型肥満」に多いとされています。治療の基本は、生活習慣の改善を中心とした食事療法や運動療法、薬物療法です。