治療後のケア相談室 - 術後の生活スタイルに関する疑問

ステントグラフトが入っている状態で運動などはできますか?

 外科手術によって人工血管を大動脈に直接縫い付けるのとは違い、細い管(カテーテル)を通して運ばれたステントグラフトは、金属スプリングの拡張力と患者さん自身の血圧によって動脈の内側に張り付けられます。

 動脈瘤の形やステントグラフトが固定されている位置などによっては不安定になることもありますが、ステントグラフト治療が予定通りに行われ、動脈瘤内への血液流入が十分に遮断されていれば、とくに運動制限をする必要はありません。高血圧や糖尿病のある方には、むしろ適度な運動をお薦めします。

 ただし、比較的新しい治療法のため、長期間にわたる安定性については明らかでないこともありますので、年に1回程度の定期検査を受けて経過を確認することが望ましいとされています。

人工血管は何年くらいもつのでしょうか?

 外科手術に使用される人工血管が開発されてから60年以上経過し、この間に様々な改良が加えられ、その長期耐久性は大きく向上しています。

 現在、体内に埋め込まれる人工血管の殆どはポリエステル糸を編んだものか、あるいは四フッ化エチレン膜であり、これらの劣化によって起こる合併症は極めて少なくなっています。

 ステントグラフトに用いられる人工血管も同様の素材で作られており、その耐久性は同等と考えられますが、ステント金属を覆うようにして作成されたステントグラフトでは、金属との接触面で人工血管が磨耗することも想定されますので、定期的な検査が必要です。

ステントグラフトの治療を受けたあとに、食事制限などはありますか?

 とくに食事の制限はなく、特別な薬を服用することもありません。しかし、ステントグラフト治療によって大動脈瘤が治療され、破裂する危険がなくなっても、他に高血圧や糖尿病などの病気に罹っている場合には、当然ながら塩分やカロリーの摂取に気をつけるとともに、それぞれの病気に対する治療薬が必要になることもあります。元来、大動脈瘤の原因として動脈硬化症がいわれていることから、すでに心臓や脳の血管病を合わせもっている可能性もありますので、それらの治療を疎かにすることはできません。

術後の検査はどのくらいの頻度で必要ですか?

 通常、退院前にCTやレントゲン撮影によって瘤内への血液の漏れやステントグラフトの変形などがないかどうか確認します。何らかの異常が見つかり、経過をみてゆく必要がある場合は、3カ月間隔でCTやレントゲン検査を行い、動脈瘤の拡大傾向をチェックします。

 退院時に異常が見られない場合は、術後6カ月目とそれ以降は年1回の定期検査を行います。検査は主にCTとレントゲン検査です。ステントグラフト治療を行った病院は、その後の経過についても実施管理委員会に報告しなければなりませんので、たとえ治療が成功して状態が安定していたとしても、必ず年1回の定期検査にご協力くださいますようお願いします。